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着物のメンテナンス

着物の染みについて

着物 しみ

着物のシミと変色の違いは

シミ・汚れとは

着物生地に異物(汚れ)が付着した物、又は不必要な物。

 

変色とは

着物生地の色が変わること、又は変えること。

着物悉皆、クリーニングでは黄色く変色することを黄変(おうへん)と呼びます。

 

シミ・汚れは付着した物を取り除くだけでよいので比較的簡単な染み抜き加工です。

しかし、変色は酸化することで着物生地の色が変わっていますので、元の状態に復元する必要があります。

変色を復元する直し作業は、まず染み抜き作業を終わらせてから変色復元加工をいたしますので時間と技術を要する難しい作業です。そのため、取扱いをしていないクリーニング店などがあります。

酸化(変色)には、酸化変色、酸化発色、酸化退色と呼ばれる3種類の形態があります。

①酸化変色

木の葉も緑色から時間が経過すると茶色く変色します。押し花は、酸素(空気)に触れないので変色しません。切ったリンゴは、直ぐに黄色く変色しますが食塩水に浸けると表面に膜ができ酸素から酸化されることを防いでくれます。酸素に触れると、物質は自然に酸化してきます。

②酸化発色

みかんのあぶり出し原理のように、汁が付着した時は、直ぐには判りません。時間が経つと、あぶり出しの原理で黄色く色が浮き出てきます。酸化発色とは、付いた時には判りにくいため後々トラブルがよく起こります。

着物でよくある事例が、胸元や脇の黄ばみです。着物クリーニング(丸洗い)を定期的にしていても防ぐことが出来ないからです。それは、着物クリーニング(丸洗い)は石油系溶剤で着物を洗うドライ系のクリーニング方法だからです。汗や尿は水性のシミになります。ドライ系クリーニングでは水性の染みは約70%~90%は残留してしまいます。未然に防ぐお手入れ方法は、汗取り(汗抜き)加工をすることです。

丁寧な仕事をする着物クリーニング店や悉皆屋では、お預かりした着物の状態を診断し適切なアドバイスをしてくれますのでプロに定期的に着物を診断してもらうことが一番の対策になります。

③酸化退色

汗やシミなどが経時変化でアルカリとなり染色を侵し、色を退色させてしまいます。シミを除去する際などに色素が流れてしまうこともあります。

 

 

着物シミのメカニズム

シミは単体で付着している事は殆どなく、様々な汚れ成分が複合して付着しています。

汚れが付着して間もないときは油、皮脂、澱粉、蛋白質、タンニン、食べかす・色素など不溶物が混在している状態ですが、時間の経過を伴い単体ごとに分離していきます。そして、付着したシミ・汚れをそのまま放置しますと時間の経過と共に酸素を吸収し酸化が始まり着物生地を変色させてしまいます。着物クリーニング店・悉皆屋などが早めの着物クリーニング・お手入れをおススメしている理由です。

 

着物シミのメカニズム1

1.油の皮膜が表面に浮き出し
硬化する。

着物シミのメカニズム2

2.油の皮膜の下に蛋白質・澱粉が
硬化する。

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3.不溶物の腐敗が始まり、
着物生地が酸化変色が進む。

 

酸化の進行度合いは、時間の経過だけではなく熱や温度、湿度など様々な状況により変わります。

このように染みの皮膜形成で油、油脂などは時間の経過と共に蛋白や澱粉などが腐りはじめ発酵し酸性からアルカリ性に変化していきます。

動物性繊維(タンパク質繊維)である正絹の着物生地にアルカリは大敵です。

 

1.アルカリは動物性繊維を溶かす。

2.アルカリは色素を弱める。

 

食べこぼし、血液などの古いシミを除去するために、水や薬品を塗っただけで生地が溶けてなくなるという事もございます。これは、プロの着物の染み抜き職人でもどうしようもない状態です。

着物染み抜きのプロは、このシミの構造を理解し適切な処置を行いますので着物生地に優しく、しっかりとシミを除去することができます。

シミ・汚れの成分により効果のある薬品は違いますので、油性の皮膜が残っている状態で不溶物の薬品を使用しても油性の膜がガードし不溶物の汚れに薬品がとどかずシミを除去することができません。着物ご着用時に必ず付着する衿・袖口の汚れも、早めのお手入れですと費用もあまり高額になりません。水洗いができない着物生地は、一つひとつ丁寧に順に染み抜き作業を行う必要があります。

シミ・汚れが付着してから時間が経過し古いシミになりますと、染み抜きの作業時間もかかりその分料金も高額になります。そして、完全に除去できない場合もあります。早めのお手入れは、大切なお着物を長くご愛用できる秘訣ですのでご参考にしてください。

 

 

プロの染み抜き作業の手順

染みの断面図

シミの断面図

 

染みの状態は、上の図のように付着しています。

染み抜きの作業は、①から順番に染みの成分によって薬品をかえて一つずつシミの成分を除去していきます。

(血液などシミの成分が特定できている場合は、順番を変える場合があります。)

同じ大きさの染みでも、染み抜き料金が違うのは使用する薬品の量や職人の作業時間が変わるからです。

このことから、殆どのお店が見積りシステムを導入しています。

 

①油、脂・皮脂、乾性油

染みの一番上の表面には油性の物質が付着しています。油は比較的容易に除去できるシミです。

脂・皮脂は、人体から分泌される油性系シミで、水溶性に近い性質があります。そのため、脂・皮脂が固まると簡単に除去できにくくなります。

ご家庭で着物の衿汚れ、ファンデーション汚れをベンジンなどでお手入れしているが汚れが段々と落とせなくなった。というお話もよく聞きます。

脂が固まると着物クリーニング(丸洗い)でも完全に落とすことが出来なくなる為、職人の手仕事で酵素を使って分解する作業を行います。油絵具などに利用される乾性油は空気中で徐々に酸化していく油のことで、油性の汚れの中で最も落としにくいシミです。こちらも着物クリーニング(丸洗い)では落とせない汚れになりますので、手作業で染みを除去する必要があります。

 

②デンプン・タンパク質

蛋白は、米、ミルク、血液など動物性食品や料理や飲み物などにも多く含まれる染みです。付着して間もないタンパク質は比較的容易に除去できます。しかし、古くなったり、酸性系洗剤や熱にふれると蛋白が固まり除去が難しくなります。澱粉・蛋白が付着した際は、熱を絶対加えないでください。

 

③タンニン・色素

タンニンは、お茶、紅茶、果汁などに多く含まれる染みです。付着して間もないタンニンは比較的容易に除去できます。お茶や紅茶などには色素が含まれます。古くなると色素が着物生地に定着し除去が難しくなります。お茶などこぼされた際に早く乾かしたいと熱を加えますと色素が定着してしまいますので、熱は加えないでください。

 

④不溶物性物質

カーボン、食べかすなどの不溶性物質は、比重が他の染みより大きく生地の下に沈殿する。

 

着物染み抜き作業の順序

基本の作業手順 

①油性シミ②水溶性シミ③蛋白質性シミ④タンニン⑤不溶性(漂白処理)⑥染色補正

着物染み抜き職人は、一つずつのシミを丁寧に手作業で落としていきます。薬品を付けた際の反応を見ながら、適切な処置を考え時間をかけて目の前の一着の着物に集中して向き合っています。①~④の染みは、付着して間もなければ殆どが除去できます。⑤~⑥の染み抜き作業は、特に技術を要します。漂白で着物生地の色目が変わったものを⑥の染色補正で色をかけ調整していきます。⑤~⑥の染み抜き工程では、100%シミ・変色を復元できることは出来ない場合がありますが、着用時に目立たない程度に復元することはできます。(程度により出来ない場合もございます。)

 

クリーニング店で落としきれない汚れ、ご家庭で毎回きちんと洗濯しているが落とせなくなったワイシャツの衿汚れなども、この手順で作業するとかなり綺麗に除去することができます。

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